道切り(ミチキリ)
人々が生活の場としている領域に、悪霊、疫病神、災厄などが侵入してくるのを防ぐため、村の境界に設けられる「呪い(まじない)」を道切り(ミチキリ)と呼んでいる。
道切りは村や部落で共同しておこなわれ、村境や村の入り口に注連縄(勧請吊り)を渡したり、お札を立てたりする。
この注連に呪物として巨大な草鞋をぶらさげる風習があるが、この草鞋を履くほどの大きな荒神が居るから入ってくるなと云う脅しの意味だとされる。
さらに、八手や南天の枝を下げたり、石を置いて人形を立てたりするところもある。つまり、道切りには悪霊・疫病や災厄の侵入を防ぎ止めるために諸々の呪いものを伴っている。
道祖神
南区の道祖神社社頭に鎮座
悪霊を防いで道をゆく人々を守護する神に道祖神がある。これは、サヘノカミ(障の神・塞の神)とも道陸神とも呼ばれ、名前のとおり元々は防障・防塞の神で、外部から侵入してくる疫神や悪霊などを防ぐため、村境や峠・辻・橋のたもとなどの道端に祀られた。これはまた、旅の安全を守る神、生殖の神や縁結びの神ともされる。
石敢當
この石敢當は、かつて勧進橋の袂で竹田街道を通行する旅人を守護していたもので、常夜灯と石敢當が結合していて珍しい形。現在は元・陶化小学校の敷地にある。
石敢當は中国伝来の災除けとして、道路の突き当たりに「石敢當」と刻んだ石柱を立てることが、沖縄諸島を中心に本土の鹿児島をはじめ九州南部・中国地方でも見られるが、これも道切りの一つと言える。
道祖神・石敢當の他にも各地で見られる呪いものには、地蔵尊・馬頭観音・庚申塔や二十三夜塔などの石塔・庚申塚などがある。
奈良県明日香村の稲渕と栢森に伝わる綱掛神事
稲渕の男綱
この神事は、稲渕では飛鳥川に男綱と呼ばれる注連縄をかけて陽物(男根)を象ったものを下げ、その上流の柏森では女綱と呼ばれる注連縄に陰物(女陰)を象ったものを下げる。この注連縄は毎年1月11日に掛け替えられる。
子孫繁栄と五穀豊穣を祈るとともに、悪疫などがこの道と川を通って侵入してこないようにするために行われる。
なお、この神事は稲渕では神式で、栢森では仏式で行われる。
道切りは元々、災厄が降りかかったときに疫神送りをおこない、その後にすることが多かったようだが、現在では村の行事として定期的に行っているところが多い。
« 奔放な女流歌人 ー和泉式部ー | トップページ | 七福神信仰と町名 »
コメント