秋 色(1)
秋めいてきたなと思うまもなく、初秋から仲秋へ、そして晩秋にと足早に移り変わって行きそうです。
秋の景色(南丹市美山町北)
彼岸花・コスモス・すすき・蕎麦畑
突然ですが、和歌に「わが袖に まだき時雨の 降りぬるは 君が心に 秋や来ぬらむ」(古今和歌集巻第十五恋歌五763)というのがあります。この歌の「秋」は、「飽き」の掛詞(かけことば)となっています。
私の袖に早くも時雨が降りかかったのは、あなたの心には私に対する秋(飽き)が来たからなのでしょうか。といった感じですね。そして、詠み手の女の袖にかかったのは「時雨」ではなく、女自身の涙だったのでしょう。
そして、男女間の愛情が冷めて心が離れることを、「秋風が吹く(立つ)」と言いますが、これも「飽き(厭き)」ですね。
ところで、「男心と秋の空」という慣用句があります。女性への男性の愛情は、秋の空のように変わりやすいという例えです。これが後になって、「男」を「女」に置き換えて「女心と秋の空」ともいうようになりました。
ここはどちらが正しいのかなどと議論(諍い?)はやめて、「人の心と秋の空」とでもしておけば波風が立たずに、人類みな平和となるのではないでしょうか。(笑)
それはそうと、「秋」という字の成り立ちを調べてみました。
「秋」の元々の字(古字)、これが難しい字なのですね。「龝(穐の旧字)」の右側の「龜(亀の旧字)」の下に火を表す「灬」がついていて、「しゅう」と読むようです。(残念ながら使用しているパソコンのソフトにはこの字がありません)
この字の意味は、「禾」が稲や穀物を表し、「龜」はイナゴなどの虫の形を表しているそうです。
秋になるとイナゴなどの虫が大発生し、穀物を食い荒らして被害を受けるので、イナゴなどを焼き殺して豊作を祈る儀礼をしたのだろうとされる。
この儀礼を表す字が「秋」の古字で、パソコンのワープロソフトには無いあの難しい字です。「みのり」の意味となるそうです。
そして、のちには虫の形を意味する「龜」が省略され、火を表す「灬」だけが残されたことで、禾偏の右側に「火」が付いて「秋」となったようなのです。(白川静『常用字解』から)