これトマソン?! その6
階段の上には建物も何も無くて、ただこのコンクリートの階段だけがあるのです。
これは何のための階段なのでしょう。天国への梯(きざはし)? それとも地獄への階段?
この物件は、京都大学吉田キャンパス本部構内の総合研究15号館(旧建築学教室本館)裏手に存在しています。
かつては、京都大学工学部建築学科意匠研究室アトリエの玄関階段だったそうです。しかし、そのアトリエは1984年に解体・撤去されたとのこと。どのような理由からなのか、4段ある階段だけが取り壊されずに取り残されてしまったのです。
心優しい職員の方が居られるのでしょう、階段だけでは余りにも殺風景で愛想がないと思ってか?、観葉植物の小鉢をいくつも乗せています。
前衛芸術家で純文学作家の赤瀬川原平氏(1937〜2014)たちの提唱した「超芸術トマソン」の概念の一つに「無用階段(純粋階段とも)」というのがありますが、これはまさしく無用階段です。
建造物が増改築や撤去などによって、階段としての機能を失ってしまい、まるでオブジェのように取り残された階段をそう呼ぶとしています。
なお、ちくま文庫『トマソン大図鑑』の分類によると、無用階段(純粋階段とも)はただ昇って降りるだけの階段。もともとは階段の先に扉などがあったものが多い。設計変更などが原因で、新設の当初から無用階段となってしまっていたものも存在するとか。